俳句が生んだエンジニアリング
筆者は50才で技術士(機械部門)の資格を得て、これまで技術士活動を約20年間続けてきた。工業炉メーカーで工業炉の設計業務を主として行ってきたので、熱工学に関連した仕事を核にして、中小企業の省エネルギー支援や、環境関連の仕事を続けている。一方、俳句とは長年のつき合いで、俳句を友として技術士活動をしていると言ってもよい。
本の中味は次の4章から構成されている。
第1章:検査・監査・省エネ支援業務
中小企業の省エネ支援報告等
第2章:講演・研究・見学会
シャープ(株)総合開発センター見学会等
第3章:環境問題について
平成15年版環境白書の概要等
第4章:社会問題について
東アジア・IT・高齢者パワー等
各章の終わりにコーヒーブレークとして俳句についてのコメントを入れた。俳句はモノを見る芸術であるといわれている。俳句は季節と人間の接点をとらえて詠む詩である。
著作にあたって
筆者の現在の職務は、中小企業の省エネルギー支援、ごみ焼却炉の技術監査、環境カウンセリング等である。一方、日々仕事に取り組んでいる中にあって、16才位から続けている俳句が仕事に大いに役立っていることを常々思い知らされている。そこで、このことを本にしてみたいと思うようになった。当初本の題名は「俳句をポケットに技術士活動」としていたが、筆者の友人が「俳句が生んだエンジニアリング」がよいと薦めてくれたためそれに従った。この名前は大きすぎて中味とマッチしていないのではないかといささか汗顔するしだいである。
日本人の感性は、規則正しく循環する四季のきめこまやかな表情に接することで磨かれてきた。物事は右脳でイメージとしてとらえられ、左脳はそれを言語的に表現する。つまり左脳は概念の世界である。概念とは、右脳がイメージとしてとらえたモノに左脳が与えたコトバである。この概念がさらに概念を生んでいくのが論理である。左脳を使うと、人間は論理的になれる。この便利さに慣れてしまうと、人間はモノの本質が見えなくなってしまう。右脳の力なくして言葉だけで現実を眺めてしまうのである。日常世界への埋没である。右脳の力即ちイメージや直感力が失われた状態になってしまうのである。人間の創造性は、左脳からは決して生まれない。右脳で生の現象を見ることからしか始まらないのである。右脳を鍛えるのに、俳句ほどうってつけのものはない。俳句は17文字のコトバの組み合わせであるが、単純なコトバ遊びではない。俳句はコトバを通して、コトバの手の届かない世界に到達する一つの手段である。
以上